プロローグ

プロローグ

Prologue

 木村設計A・Tの事務所は、偶然なのかそれとも歴史のいたずらなのか、郷土が誇る詩人であり夢のデザイナー(少なくとも私はそう理解している)である「宮沢賢治」が、「イギリス海岸」と名付けた場所のすぐ近くにあります。北上川、に東から猿ケ石川が、西側から瀬川が落ち合い、河岸の公園整備がすすんでいます。

 「宮沢賢治」が、自らの心象に描きだした「イーハトーブ:ドリームランドとしての日本、岩手県」は、その多くの作品の中に登場します。イギリス海岸は、その岩手県を流れる大河「北上川」の岸辺であり、ある意味でイーハトーブを流れる夢の川の岸辺に刻んだ地名です。そしてそれは、『銀河鉄道の夜』の銀河の渚「プリシオン海岸」のモデルにもなっております。

 そして、もうひとつ、私たちの事務所の前には、杉の巨木に囲まれ八幡神社」が静かに鎮座し、まさに鎮守森として敬われています。神社と鎮守の森は、ある意味で私たちが未来に描く「エコミュージアム」の原型です。

 郷土が誇る夢のデザイナーが伝えた「イギリス海岸」そして、この地域の鎮守の森の「八幡神社」に挟まれた私たちの事務所は「イーハトーブ・エコミュージアム」の創出と、その思想の発信を目指します。

 それは、地域の風土が生み出し育てた資源「土」「水」「石」「木」を素材として、また地域が伝えて磨き上げてきた「技」「文化」を継承し、新しい科学技術との融合を図りながら、地域づくりに貢献すること。

 鎮守の森が伝える「エコミュージアム」の思想を受け継ぎ、宮沢賢治が描いた「夢のデザイン」の模倣が私たちの設計事務所のコンセプトです。

 私たちは、そのコンセプトに基づき施設や建物、住まいの設計を通じて、地域の未来に貢献をします。ドリームランド「イーハトーブ」の豊かなくらしの実現を夢みながら。

2012年11月